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  • 2020.04.15
  • トレンド・考察

高速バスの過去、現在、未来

高速バスのこと知っていますか

皆さんは高速バスに乗ったことはあるでしょうか?「高速バス」というと遠足や、スキーツアーを思い出す方もいらっしゃるかもしれませんが、実は高速バスという法律上の定義はありません。法的にはバスには観光バスと称される「貸切バス」と「路線バス/乗合バス」の2種類しかないのです。ですから、たとえ高速道路を走ったとしても、遠足やスキーツアーで乗ったバスは「貸切バス」となり、東京―大阪といった出発地点と到着地点と経路が予め決まって定期運行している「高速乗合バス」は「路線バス」となります。

「高速乗合バス」1950年代から存在していましたが、高速バスが登場したのは、日本で最初の高速道路である名神高速道路が開通後の1964年になります。その当時のバス車両では時速100kmで巡行する高速走行には性能が足りなかったために、高出力エンジンや強化ブレーキそして高速型トランスミッションを搭載した高速バス用の車両が新たに作成されました。また、社内トイレや室内クーラーなど当時から長時間の乗車に考慮した設備が装備されました。同じ1964年に開通した新幹線が最先端な乗り物であったように、高速バスもまた当時の最先端な乗り物だったのです。当時の国鉄では、名神高速道路開通に合わせて、試作バスを作成しそのカラーリングは当時の国鉄の特急をイメージした赤と白のカラーリングだったそうです。でも実際の営業車では、東海道新幹線に似た青と白のカラーリングでした。また、名神高速道路では名鉄がメイン出資者であった日本急行バスと近鉄がメイン出資者であった日本高速自動車の2社も参加し、3社が高速バスを走らせていました。

交通手段として見た高速バス

では、高速バスはどのぐらい利用されているのでしょうか。サービスが始まって直後の1965年には年間での利用者は約4百万人しかありませんでしたが、2015年には、年間で1億1千万人を越えるまで増加しています。また系統数も1965年には8系統しかありませんでしたが、2015年にはなんと5千を超えています。

さらに、2015年度の新幹線や飛行機と旅客数を比較してみると、最も多いのは新幹線で年間に4億人以上が利用しています。飛行機は1億人弱です。

高速バスを利用者は飛行機よりも多く、全体の19%を占めてします。新幹線や飛行機に比べ、補助的なイメージがある高速バスですが、旅客数から見ると飛行機よりも多く、地域間や都市間を結ぶ主要な交通機関となっています。さらに、高速バスは他の交通機関よりも、よりきめ細かく都市を網羅しています。

出典:国土交通省の公開情報を基に独自に作成

 

廃止された高速ツアーバスと新高速乗合バスとは

貸切バスによるいわゆる「高速ツアーバス」による過去の死亡事故から安全性に問題があるのではと思っている方もいるかもしれません。特に、2012年4月に関越自動車道において発生し7名が死亡した高速ツアーバス事故は、記憶に残っているかもしれません。この事故では、法令で認められていない日雇い運転手が運転し、健康状態の確認等を行う点呼も実施していなかったなど、多数の法令違反が確認されました。

「高速ツアーバス」とは、旅行業者が貸切バスを使って2地点間の移動を目的として運行する募集型企画旅行(パック旅行)であり、厳しい管理が義務図けられている乗合バス事業者が運行する高速バスとは制度上異なっているのですが、利用者から見ると料金を払って、バスに乗って出発地点から到着地点に行くということに変わりはなく、バス車両もバス会社の関係者かマニアでもなければ区別は難しいものでした。

この関越道の事故をきっかけに、「高速ツアーバス」は廃止され、「高速乗合バス」に「高速ツアーバス」の長所とされた柔軟な供給量調整・価格設定など取りいれた「新高速乗合バス」に2012年7月より一本化ことになり、2018年8月から実施されました。

これによって、「高速ツアーバス」を企画実施していた旅行業者は高速バス事業を行うことができなくなり、行うためには新たに一般乗合旅客自動車運送事業の認可を受ける必要が生じました。また貸切バス事業者は乗合バス事業者と運行請負契約を結ぶことで、「高速乗合バス」として保有するバス車両を運行することが可能となりましたが、これには、国土交通大臣の許可が必要となり、高速乗合バスを運行するために必要とされる安全対策を施す必要が生じました。

出典:国土交通省報道発表資料

高速バスの進化

高速バスはどのように進化していくのでしょうか。

もし、あなたが高速バスを昭和時代のツアーバスのように、狭い、暑い/寒いといったイメージをもっているとすると、すでに現在の高速バスとの差にビックリするかもしれません。

通常の高速バスは4列シートですが、長距離路線では3列シートやさらに2列シートという車両が投入されています。3列シート車両ではフットレストや電源、シート間の仕切りやカーテンでプライベート空間を確保できる工夫がされています。中には電動リクライニング、液晶モニター、140度以上リクライニングする車両もあります。もはや、新幹線のグリーン車以上のシートです。そして、2列シートとなると飛行機のビジネスクラス並みです。

もちろんシートが良いほどお値段も高価となり、新幹線の普通席よりも高価となる場合だってあります。社内装備として長距離路線では車内トイレがあるのは当たり前ですが、中にはパウダールーム(洗面所)がある車両もあります。また、座席によってはスリッパ、毛布、おしぼりなどのアメニティーも用意したある車両もあります。Wi-Fiの装備はもはや常識です。

車両の快適性能も進化しています。サスペンションはエアサスペンションと電子式の可変ダンパーで揺れや、ショックを抑えています。エンジンは殆どの車両でディーゼルターボですが、巡行時の室内での騒音レベルは低く、一般の乗用車同等以上の静粛性を持っています。トランスミッションもマニュアルモード付のオートマチック(AMT:オートマチックマニュアルトランスミッション)なのでシフト時の加減速やシフトミスによるショックなどが抑えられます。室内空調はマルチゾーニングのオートエアコンで冷房、暖房、除湿の機能を持っています。もはや、クーラーやヒーターではないのです。

あまり、大型バスを個人で買う人は少ないので、テレビコマーシャル見る機会はないと思いますが、バスも自動運転化が進んでいます。ミリ波レーダとカメラを搭載し、歩行者検知機能付きの自動ブレーキ、車線逸脱警報装置、全速域ACC(アクティブクルーズコントロール)最新の乗用車と同様な装備されています。また、カメラで運転手の姿勢や顔向き、瞼の開閉状態を常にモニターし、居眠り運転などの兆候を感知して警告音で注意喚起をします。さらに、運転手の異常をカメラで検知し、さらに車線逸脱を検知した場合は、車内と車外にランプやホーンで注意を喚起し、自動的に停止するEDSS(Emergency Driving Stop System)も装備されます。

現在は自動運転レベルではレベル2ですが、将来的にはレベル3、そしてレベル4へと進化していくことが予測されます。高速バスは決まったルートを通り、高速道路が主で一般道を走る場合も幹線道路を利用するので、歩行者と分離されている走行割合が高く、自動運転に向いています。

日本では、現状では道路交通法上、シートベルトの十分な着用ができなくなるためシートをフルフラットにすることはできないのですが、米国ではロサンゼルスとサンフランシスコ間でベンチャー企業が開発した、アクティブモータによって走行振動を打ち消す日本のカプセルホテルのような客室を装備した寝台バスが運行しています。ロサンゼルスとサンフランシスコ間は飛行機なら1時間30分なので、搭乗までの時間を考えても2時間ぐらいで、シャトル便が毎時間あるので、スピードではバスに勝ち目はありません。しかし、もしバスで快適な睡眠環境が用意できるなら話は別です。寝ている間に着くなら、実質的に移動時間をゼロにできるからです。

バスは安いけど狭いというのは昔話になろうとしています。また自動運転になれば事故は減らすことができるので、安全性も向上させられます。ちなみにロサンゼルスとサンフランシスコ間は高速道路で約600kmあります、これは東京と姫路ぐらいです。

 

生熊 清司

外資系IT企業やコンサルティング会社を経て現在はインサイトテクノロジーというIT企業でマーケティング部門を率いています。趣味で車とITをテーマに自動車雑誌にコラムを執筆したりしています。兵庫県西宮市生まれの58歳。