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  • 2020.06.02
  • トレンド・考察

MaaS ってしってますか?

MaaS とは

MaaS はMobile as a Service の略なのですが、さまざまな解釈があり1つの確立した定義はありません。しかし、いずれも交通手段をITの技術を利用して、これまで以上に便利なサービスとして提供しようとする考え方です。

国土交通省ではMaaSを以下のように定義しています。
「電車やバス、飛行機など複数の交通手段を乗り継いで移動する際、それらを跨いだ移動ルートは検索可能となりましたが、予約や運賃の支払いは、各事業者に対して個別に行う必要があります。このような仕組みを、手元のスマートフォン等から検索~予約~支払を一度に行えるように改めて、ユーザーの利便性を大幅に高めたり、また移動の効率化により都市部での交通渋滞や環境問題、地方での交通弱者対策などの問題の解決に役立てようとする考え方の上に立っているサービスがMaaSです。」

出典:国土交通省

また、国土交通省はMaaSを以下のように説明しています(図1)。

図1:MaaSとは

「MaaS (Mobility as a Service)は、スマホアプリにより、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスです。新たな移動手段(シェアサイクル等)や関連サービス(観光チケットの購入等)も組合せられます。」

出典:国土交通省「MaaS 推進に関する取組について」

 

つまり、すでに個別のサービスとして既にスマホアプリやWebアプリとして利用されている「路線案内」「キャッシュレス決済」「予約サービス」「シェアサービス」「配車サービス」と、自転車、自家用車、レンタカー、バス、鉄道、航空機などの移動手段、さらには観光やショッピング、娯楽、通院といった移動する目的を統合して利用できる環境を実現することで、人と物の流れを最適化し、交通ラッシュ、環境問題、高齢化社会などの社会問題を解決しようとするものです。

 

as a Service のサービスって何?

as a Serviceというのは、元は IT 業界でクラウドコンピューティングが提供するサービスの種類を表すものでした。IT システムは企業の大型コンピュータを使用したものでも、個人で使用するパソコンやスマホでも、その大小を問わず多くは3層で構成されています。第1層はインフラストラクチャーと呼ばれるコンピュータや通信機器などのハードウェア、第2層は Windows や iOS などの基本ソフトやデータを管理するデータベースのようなソフトウェア、そして第3層はワープロやメールといった実際に利用者が使うアプリケーション・ソフトウェアです。この各層をクラウドコンピュータでは第1層を IaaS(Infrastructure as a Service)、第2層をPaaS(Platform as a Service)、第3層を SaaS(Software as a Service)と呼び、各層ごとにサービスとして提供しています。

IT業界でもクラウドコンピューティングがサービスとして提供する前は、当然ですが製品として提供していました。メーカーはハードウェアであろうとソフトウェアであろうと消費者に製品を提供することで対価を得ていました。as a Serviceでは、製品を提供するのではなく、製品の機能をサービスとして提供することで対価を得ます。「サービス」という言葉は日本では「値引き」の意味で使用される場合がありますが、これは「サービス」本来の意味とは少々違います。「サービス」とは、付加価値の提供を意味するので、必ずしも無償というわけではありません。

図2は製品ビジネスとサービスビジネスの違いをまとめたものです。最も大きな違いは製品を売らないということにあります。サービスなんだから当たり前と思うかもしれませんが、製品そのものが売りにならなくなることはビジネスの根幹が変わることを意味します。

これまでの製品ビジネスでは、製品の性能の差が直接的な差別化要因となるので、各メーカーは性能競争を続けてきました。例えばコンピュータでいえば処理性能であり、車でいえば最高速度や燃費などです。性能が消費者の購買意欲に大きく影響するからこそ、自動車メーカーはレースに多額の資金を投じて、性能の良さをアピールしてきました。

図2:製品ビジネスとサービスビジネスの違い

ところが、サービスビジネスでは、製品の性能の良し悪しよりも、提供サービスによって顧 客がどれだけ良い体験を得られるかが重要となります。なぜ、SONYウォークマンがApple iPodに負けたのかを考えてみましょう。iPodが出現した当時、オーディオ機器としての性 能、つまり音質ではウォークマンは消して負けていなかったと思います。どちらかと言えば、ウォークマンの方が音質は良かったと思います。しかし、音楽配信サービスで負けてしまい ました。実は音楽配信サービスはSONYの方が先に始めたのですが、使い勝手やダウンロードできる楽曲の量で劣っていたために、あっという間にAppleに市場を席捲されてしまいました。

もう1つ大きな違いは、顧客は製品を所有しないという点です。これは、ソフトウェアに限ったことではありません。ハードウェアでも同じです。現在のサービスビジネスはサブスクリプション方式で販売されます。サブスクリプション方式では、顧客は月額や年額で一定の金額を支払うことで、一定の期間の使用権を得るという販売方式です。ローンやリースと異なるのは、所有権がメーカーや販社から移転しない点で、その結果、顧客は利用期間の使用代金を支払うだけなので、途中で別のサービスに乗り換えたりすることがより簡単にできます。

サービスが気に入らなければ変更できるので、提供側は顧客がサービスを継続してくれるように、サービスの継続的な向上を求められます。さらに、顧客のニーズの変化を得るために、顧客との付き合い方も変えなければならなくなります。

 

MaaS によって何がかわるのか。

MaaSって自動運転車が普及した未来の話だと思われているかもしれませんが、MaaSにとって自動運転は必ずしも必須条件ではありません。MaaSへの取り組みをもう始まっています。すでに実現しているサービスにも、MaaSと呼べるものがあります。例えば、交通系ICカードです。現在、1枚のカードで北海道から沖縄まで電車やバスに乗れます。また、全国のコンビニなどで電子マネーとしても利用できます。

JR会社では、昔から駅レンタカーで鉄道とレンタカーの組み合わせによる値引きサービスを実施していましたが、JR東日本では、同社の交通系 ICカードであるSuicaとスマホ用アプリをベースにタクシー、飛行機、レンタル自転車などの様々の交通手段との連携して、予約から決済までを一気通貫で行える実証実験を行っています。

小田急電鉄や近鉄などの沿線に観光地を持つ私鉄各社も観光地での宿泊や飲食と鉄道を一体化したサービスの提供を実現するアプリの実証実験を行っています。

国土交通省でもMaaS推進のために、全国各地から新たなモビリティサービスの実証実験を公募して、支援を行っています。現在「新モビリティサービス推進事業」として19地域で実証実験が行われています。これには「「大都市近郊型・地方都市型」「「地方郊外・過疎地型」「「観光地型」と3種類が含まれており、地域で異なる問題の解決にMaaSがどのように役に立つのかを検証しています。

MaaSのようなサービスを提供する事業者は、消費者視点に立って、その利便性の向上が実体験として得られなければ継続して利用されません。消費者も便利なサービスが使いたいなら、積極的に実証実験に参加したり、体験したサービスの良し悪しを事業者側に伝えたりして、相互にコミュニケーションしながら、サービス内容を向上させていくことが重要になると思います。もし、皆さんの近くでMaaSの取り組みがあった場合には、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

 

生熊清司

外資系IT企業やコンサルティング会社を経て現在はインサイトテクノロジーというIT企業でマーケティング部門を率いています。趣味で車とITをテーマに自動車雑誌にコラムを執筆したりしています。兵庫県西宮市生まれの58歳。